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JAPAN DISCOVERY 02 FUKAE SEDGE HANDWORK 大阪府大阪市 JAPAN DISCOVERY 人 技 品JAPAN DISCOVERY 02 FUKAE SEDGE HANDWORK 大阪府大阪市 JAPAN DISCOVERY 人 技 品

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約2000年前から、大阪の深江ではぐくまれてきた伝統工芸・菅細工。
なかでも菅笠は、歴代天皇即位時に行われる大嘗祭、
伊勢神宮の式年遷宮に用いられるほど、高く評価されています。
今回は稀少な伝統技術を守っている、深江菅細工保存会を訪ねました。

Interview @深江菅細工保存会 大阪府認定伝統工芸士 島谷真由美さん

一度途絶えかけた伝統技術を復活させるため奮闘の日々

大阪市東成区にあたる深江で、菅細工をつくりはじめたのは約2000年前。かつては沼地で、菅細工の材料となる菅草の栽培に適していたため、笠を縫うことを生業としていた笠縫一族が移住し、菅笠を作り出したのが、深江の菅細工の始まりだと伝えられている。そして菅草農家も農閑期に菅細工を作るようになり、伝統工芸として現代まで引き継がれてきた。

大阪市の宅地化が進み、昭和30年代には菅田が消滅。菅草は他府県から仕入れることもできたが、時代の流れとともに菅細工自体の需要が減り、昭和後期には菅細工の技術を継承しているのはたった1軒に。そんな折に第60回伊勢神宮の式年遷宮に納める菅笠を作ってほしい

という依頼が入る「このままではいけない」と一念発起し、1988年深江菅細工保存会をつくったのが、現代表・島谷真由美さんの母である幸田正子さん。「当初は母が指導者となり、近隣の主婦のみなさんに菅細工の作り方を教えていました」と島谷さん

その後も伊勢神宮の式年遷宮の際は、菅笠を献納。島谷さんの尽力により、2016年には大阪府伝統工芸品に指定され、知名度がアップ。和雑貨を扱う個人商店から受注を受け、鍋敷きやコースターなどを作る機会が増えてきている。

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作りはじめると夢中になる不思議な魅力を持つ菅細工

深江菅細工保存会の発足時にいたのは主婦6人。近隣でワークショップを開き1年ほど通ってくれた人をスカウト。保存会で1年間の研修を受け、継続を申し出た人のみが本会員に。毎月4回のお稽古に3年ほど通い、やっと商品として売り出す菅細工づくりに携われるようになる。

菅細工の製品といえば、鍋敷き、コースター、円座など。四国八十八カ所を巡るお遍路さんなどがかぶる菅笠も、菅細工のひとつだ。取材時に作ってもらったのはコースター。大小2枚の円形の厚紙を重ね、その間に菅草を1本ずつ巻いていく。今回はCHAINのロゴマークの太陽を、ロゴと同じ本数の菅草を放射線状に巻いていくことで表現してもらった。「単純作業ではあるけど、根気が必要」と島谷さん。菅草は自然の素材であるため、それぞれ形状が異なるが、見た目を

美しく仕上げるには、同じくらいの幅と厚みと色味の菅草を選ばなくてはならない。この作業が厄介で最初のうちは時間がかかってしまう。慎重に作業を続けても、最終的に納得がいく形にならなければ、菅草をほどいて最初からやり直しだ。

1人前になるまではかなり長い道のりだが、これまで途中でリタイアした人はいない。発足当初は近隣の主婦6名のみだが、今は男性や他に仕事を持つ女性などを含めた計15名のメンバーがいる。「何年経っても難しい。でも悔しいから、もっとうまく作りたいと思い何十年も続けてきた」「理由なく惹かれてしまう。気が付くと、家でも菅細工をつくっている」というのは現メンバーの言葉。みな自然な流れで菅細工の魅力にはまっていく。

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脈々と受け継がれた伝統工芸を次世代に伝えていくことが使命

菅細工という伝統工芸を守るため、力を入れているのは若い世代に向けた広報活動。保存会発足当初から地元の小学校と協力し合い、小学生に菅細工を身近に感じてもらえる活動を続けている。「毎年11月、小学3年生を対象に菅田に苗を植えてもらいます。翌年の夏、4年生になってから菅田を刈り入れ、秋に親子で菅細工づくりを体験してもらっています」。裸足で泥だらけの

田んぼに足を踏み入れたことがない子どもたちが大はしゃぎ。印象深い体験になっているよう

最近では小学生時代に菅細工に触れたことを思い出し、取材に来たり、菅細工をオーダーする人が増えてきたり。「社会人になっても覚えていてくれているのがうれしい」と朗らかな笑顔で話す島谷さん。「代々受け継がれてきた伝統工芸を後世に伝えていくのが私の使命です」と力強く語った。

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深江菅細工保存会深江菅細工保存会

〒537-0002
大阪府東成区深江南3-5-17
TEL 06-6971-9964

http://www.fukae-suge-zaiku.jp